ところで覆面というのは、自分の顔を覆って、( 1 )を隠したまま、他者を見るための装具である。私を他者の視線から遮る一枚の布によって、その布の両側にいる二人の人間が、見るが見られない人と、見られるが見返せない人とに分割される。覆面越しに見られた人は、見る人の( 2 )を確認できても、それが誰であるかを突き止めることはできないのだ。
例題:
A. 1.名前 2.性別
B. 1.目 2.性別
C. 1.目 2.声
D. 1.素性 2.声
E. 1.素性 2.存在
F. 1.名前 2.存在
名前はどこにも登場しない。覆面はむしろ視界は確保する必要があるため、目を覆うことは不可能である。また、覆面越しに見られた人は、顔はわからなくとも、そこに人がいるということは認知できる。
これだけ苦労しても、書いた文章に言葉の( 1 )はまだあるもので、それを削る。単語に関していえば、( 2 )になりがちな語の筆頭は形容詞と( 2 )、とくに( 2 )で、中でも「たいへん」とか「非常に」とかいうのは、ほとんどの場合捨てることができる。こうして言葉を削って、このことについてこれだけの字数で言うにはこう書くほかは書きようがない、というところまでもっていく、つまり抜き差しならぬ文章を仕上げる。
例題:
A. 1.むだ 2.形容動詞
B. 1.むだ 2.副詞
C. 1.間違い 2.助動詞
D. 1.間違い 2.副詞
E. 1.誤用 2.助動詞
F. 1.誤用 2.形容動詞
間違いや誤用であれば「訂正」や「修正」になるのであって、削ることはない。また、「たいへん」や「非常に」は動詞を修飾するので副詞である。
見習いの機能が生きていた時代には、大人は、たとえ子供を理解しないままでも、( 1 )を養成することができた。それとは対照的に、近代の学校教師は、子どもを( 2 )に育てあげる能力をほとんど失ったにもかかわらず、いや失ったがゆえに、子どもへの理解を無限に強いられる。
例題:
A. 1.後継者 2.教師
B. 1.指導者 2.教師
C. 1.後継者 2.社会人
D. 1.指導者 2.社会人
E. 1.後継者 2.職人
F. 1.指導者 2.職人
見習いが存在していた時代の場合は、次に続く職人を育成していた。また、現代は学校の教師は、子どもを社会人に育てるべく、さまざまな知識などを教えようとするが、さまざまな課題を抱えている。
伝統に歴史は必要であるとしても、歴史はそのまま伝統ではない。単に無意識のまま受け伝えられてきたものは、( 1 )と呼ばれるにさわしいものであって、まだ( 2 )ではない。( 2 )は、それと意識されることによって初めて( 2 )となる。古くから伝えられてきたものが一つのモデルないしは手本として意識された時に( 2 )というものになるのである。
例題:
A. 1.伝承 2.文化
B. 1.伝統 2.文化
C. 1.伝承 2.芸術
D. 1.伝統 2.芸術
E. 1.伝統 2.歴史
F. 1.伝承 2.伝統
単純に伝えるだけでは「伝承」であり、それを守る価値を見出し、強い意識をもって後世にも伝えようとしたときにそれははじめて伝統となる。
多くの論者が指摘しているように、ディズニーランドという空間の顕著な特徴は、それが、完璧に( 1 )された空間であって、( 2 )な内部を形成している、ということである。ディズニーランドは、外的空間から効果的に遮断されているだけではなく、まさに遮断されているという事実からも遮断されている。
例題:
A. 1.遮蔽 2.自立的
B. 1.開放 2.自立的
C. 1.遮蔽 2.幻想的
D. 1.開放 2.幻想的
E. 1.遮蔽 2.虚構的
F. 1.開放 2.虚構的
ディズニーランドは遮断されているという主張が後半で出てくる。また、遮断されるために、訪れた人々は外側の世界を意識することなく、ディズニーランド独自の世界観を楽しめる。その世界観で完結できるところが特徴である。
私たちの「運命への関心」は、科学が発達したからといって消え去りはしない。この関心に対しては確率論も無力である。確率的な予測は、( 1 )の観測を仮定してはじめて成り立つ。しかし人生において私たちは決して( 1 )のトライアルを許されてはいない。むしろ特定のただ一回のトライアルが問題なのだ。その( 2 )の挑戦でどの目が出るか、そこにすべての運命がかかっている。
例題:
A. 1.無限回 2.積み重ね
B. 1.計算上 2.一回限り
C. 1.一回 2.無限回
D. 1.無限回 2.一回限り
E. 1.一回 2.積み重ね
F. 1.計算上 2.無限回
確率は、少数回の試行では、そのときの偶然に左右されるため、試行は無限回に近づけるほど、計算上の確率に近づくことが知られている。しかし、実際の人生における出来事は、無限回の試行はできないし、むしろたった一回のイレギュラーで事態は大きく変わってしまうものだ。
その技術には( )的な人が多かった。
例題:
A. 懐疑
B. 疑念
C. 疑惑
D. 質疑
E. 疑問
それが本当か疑わしいこと。後ろに「的」がつくのは懐疑のみ。
ニュースを見て、事故に遭った人の( )を気遣う
例題:
A. 安堵
B. 安心
C. 安全
D. 安否
E. 安息
「安否」は無事かどうかという意味。「安全」も近いが、「気遣う」につなげることを見れば、安否がより適している。
うがいの( )が風邪の予防になる。
例題:
A. 奨励
B. 遵守
C. 激励
D. 敢行
「奨励」は人にすすめること。「遵守」は決まりや法令などを守るという意味であり、習慣に対しては用いない。「敢行」は思い切って行動すること。「慣行」であれば( )に適切なことばとなっていた。